昭和時代後期（1970年代〜1980年代）は、世界中で社会運動が激しくなり、日本でも急進的な思想を掲げる過激派が活動を活発化させました。山本直樹作の『レッド』は、日本赤軍を題材に、実在の過激派組織が当時の社会で果たした役割と、人々が抱える葛藤や挫折をリアルに描いています。
1. イデオロギーと個人の葛藤
『レッド』では、イデオロギーに惹かれて過激派運動に参加する若者たちの心理が丁寧に描かれています。彼らが社会の矛盾と向き合い、変革を求める中で直面する葛藤や、次第に組織のイデオロギーと自分の考えに矛盾を感じていく様子が詳細に表現されており、思想の重圧と個人の苦悩について学ぶことができます。
2. 過激派運動と日本の社会的背景
作中では、1970年代の日本で過激派運動が盛んになった社会的背景が描かれています。戦後日本が急速に経済成長する中で、既存の社会体制に疑問を持ち、変革を求める人々が増加しました。この時代背景を通じて、当時の日本社会がどのようにして急進的な思想の台頭を許したか、社会の問題点を学ぶことができます。
3. 組織内の人間関係とその崩壊
『レッド』では、過激派組織内での人間関係や、イデオロギーによる抑圧が組織の崩壊にどう繋がっていくかが描かれています。仲間たちが目的達成のために協力しながらも、次第に疑念や不信感が生まれ、組織が分裂していく様子は、どんな組織においても内包する危機を示唆しています。組織の危うさや集団心理について深く考えさせられます。
まとめ
『レッド』は、日本赤軍という実在した過激派組織を通して、昭和時代の社会背景と人間の葛藤を描いた作品です。理想と現実のギャップ、集団心理の危うさなど、時代や場所を超えて考えるべき普遍的なテーマが込められており、昭和の日本社会と人間の心理を学ぶための貴重な作品です。